登場メンバー
- カトー:フジトモ号の船長。みんなを導くリーダー。
- ともりゅう:知恵の龍。静かに真実を語る。
- ともねこ:癒しの猫!人の気持ちに寄り添い、あたたかな言葉を届ける。
- 剛龍:福祉用具と住宅改修の担当。力強く、まっすぐな兄貴分。
- 創龍:見習いスタッフ。ケアマネ資格を持ち、学びながら成長中。
春の風が、街をやさしく撫でていた。
坂の上にある小さな家の前で、カトーたちは立ち止まる。
玄関の前には三段の段差。
そして、手すりのない階段。
ともねこが見上げてつぶやいた。
「ここを毎日登るの、大変そうニャ。」
ともりゅうがうなずく。
「今日は“安心への道”をつくる仕事じゃ。」
玄関の扉が開き、
穏やかな笑顔のおばあちゃんが現れた。
「いらっしゃいませ。ほんとに助かりますねぇ……」
その声に、春風がやわらかく重なった。
依頼の内容
おばあちゃんは78歳。
ひとり暮らし。
坂の上のこの家で、長い年月を過ごしてきた。
「最近ね、足がちょっと言うことをきかなくてね。
でもまだ、自分の足で歩きたいんですよ。」
剛龍がまっすぐな目でうなずいた。
「“歩きたい”って気持ち、いちばん大事です。
だから今日は、“支える”より“寄り添う”手すりにしましょう。」
創龍がメモを取りながら言う。
「高さはおばあちゃんの手の位置に合わせて……
角度も少しゆるやかにすれば、力が入りやすいです。」
ともねこ:「人に合わせるリフォームって、あったかいニャ。」
ともりゅう:「うむ、それが“安心”を形にするということじゃ。」
漢 工事がはじまる
剛龍がゆっくりと測りを当て、
創龍が工具を手に真剣な表情を浮かべる。
トントン……と木を打つ音が、玄関にリズムを刻む。
それはどこか、優しい心臓の鼓動のようだった。
おばあちゃんは玄関の隅に座りながら、その様子を見ていた。
「こうして見るとね、手すりって“壁の飾り”じゃなくて“心の支え”なのね。」
剛龍が笑顔で答える。
「そうですね。誰かの“安心”を守る道具なんです。」
創龍:「こうして一緒に作業できて、ぼく、なんだかうれしいです。」
ともねこ:「優しさの中に、力があるニャ。」
ともりゅう:「“福祉”とは、まさに“幸せを生む知恵”じゃな。」
完成と“ありがとう”
工事が終わったころ、午後の光が玄関を包んでいた。
木の手すりは温もりのある茶色。
手を添えると、ほんのりと春のぬくもりを感じる。
おばあちゃんが手すりをそっと握る。
「これなら、安心して上がれそうです。」
一段、二段……
その足取りはゆっくりだけれど、確かだった。
「ありがとうね。これで、またお花に水をあげに行けるわ。」
その笑顔を見て、カトーが静かに言った。
「私たちの仕事は、家を直すことじゃない。
“暮らしの力”を取り戻すお手伝いをすることです。」
ともねこ:「“ありがとう”って、心の光だニャ。」
ともりゅう:「今日もまた、ひとつの安心が生まれたのう。」
剛龍:「おばあちゃん、これからも歩き続けてくださいね。」
創龍:「ぼくも、誰かの“安心”をつくれる人になりたいです。」
風が玄関を抜け、坂道をゆっくり下っていく。
その風は、どこかやさしく、あたたかかった。
──つづく。
【次回予告】
第55話「見守りベッドと夜の安心〜家族をつなぐ灯り〜」
夜の不安を“安心の光”に変えるリフォーム。
フジトモ号が届ける、あたたかな見守りの物語。



