フジトモ島の冒険Adventures on Fujitomo Island

🌟第54話「坂の上の手すり物語〜安心への小さな一歩〜」

登場メンバー

  • カトー:フジトモ号の船長。みんなを導くリーダー。
  • ともりゅう:知恵の龍。静かに真実を語る。
  • ともねこ:癒しの猫!人の気持ちに寄り添い、あたたかな言葉を届ける。
  • 剛龍:福祉用具と住宅改修の担当。力強く、まっすぐな兄貴分。
  • 創龍:見習いスタッフ。ケアマネ資格を持ち、学びながら成長中。

春の風が、街をやさしく撫でていた。

坂の上にある小さな家の前で、カトーたちは立ち止まる。

玄関の前には三段の段差。

そして、手すりのない階段。

ともねこが見上げてつぶやいた。

「ここを毎日登るの、大変そうニャ。」

ともりゅうがうなずく。

「今日は“安心への道”をつくる仕事じゃ。」

玄関の扉が開き、

穏やかな笑顔のおばあちゃんが現れた。

「いらっしゃいませ。ほんとに助かりますねぇ……」

その声に、春風がやわらかく重なった。

 依頼の内容

おばあちゃんは78歳。

ひとり暮らし。

坂の上のこの家で、長い年月を過ごしてきた。

「最近ね、足がちょっと言うことをきかなくてね。

でもまだ、自分の足で歩きたいんですよ。」

剛龍がまっすぐな目でうなずいた。

「“歩きたい”って気持ち、いちばん大事です。

だから今日は、“支える”より“寄り添う”手すりにしましょう。」

創龍がメモを取りながら言う。

「高さはおばあちゃんの手の位置に合わせて……

角度も少しゆるやかにすれば、力が入りやすいです。」

ともねこ:「人に合わせるリフォームって、あったかいニャ。」

ともりゅう:「うむ、それが“安心”を形にするということじゃ。」

漢 工事がはじまる

剛龍がゆっくりと測りを当て、

創龍が工具を手に真剣な表情を浮かべる。

トントン……と木を打つ音が、玄関にリズムを刻む。

それはどこか、優しい心臓の鼓動のようだった。

おばあちゃんは玄関の隅に座りながら、その様子を見ていた。

「こうして見るとね、手すりって“壁の飾り”じゃなくて“心の支え”なのね。」

剛龍が笑顔で答える。

「そうですね。誰かの“安心”を守る道具なんです。」

創龍:「こうして一緒に作業できて、ぼく、なんだかうれしいです。」

ともねこ:「優しさの中に、力があるニャ。」

ともりゅう:「“福祉”とは、まさに“幸せを生む知恵”じゃな。」

 完成と“ありがとう”

工事が終わったころ、午後の光が玄関を包んでいた。

木の手すりは温もりのある茶色。

手を添えると、ほんのりと春のぬくもりを感じる。

おばあちゃんが手すりをそっと握る。

「これなら、安心して上がれそうです。」

一段、二段……

その足取りはゆっくりだけれど、確かだった。

「ありがとうね。これで、またお花に水をあげに行けるわ。」

その笑顔を見て、カトーが静かに言った。

「私たちの仕事は、家を直すことじゃない。

“暮らしの力”を取り戻すお手伝いをすることです。」

ともねこ:「“ありがとう”って、心の光だニャ。」

ともりゅう:「今日もまた、ひとつの安心が生まれたのう。」

剛龍:「おばあちゃん、これからも歩き続けてくださいね。」

創龍:「ぼくも、誰かの“安心”をつくれる人になりたいです。」

風が玄関を抜け、坂道をゆっくり下っていく。

その風は、どこかやさしく、あたたかかった。

──つづく。

【次回予告】

第55話「見守りベッドと夜の安心〜家族をつなぐ灯り〜」

夜の不安を“安心の光”に変えるリフォーム。

フジトモ号が届ける、あたたかな見守りの物語。

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