登場メンバー
- カトー:フジトモ号の船長。みんなを導くリーダー。
- ともりゅう:知恵の龍。静かに真実を語る。
- ともねこ:癒しの猫。あたたかな言葉で寄り添う。
- ともいぬ:元気な犬。場を明るくするムードメーカー。
- 守龍:工務の守り神。現場判断に強い職人タイプ。
- 創龍:見習いスタッフ。ケアマネ資格持ちで吸収力抜群。
朝の光がまぶしく差し込む、ある一軒の家。
その玄関の前で、カトーは小さく眉を寄せた。
「……この段差、3センチか。」
ほんの少し。
けれど、暮らしの安全を左右する“境界線”でもあった。
ともいぬが覗き込む。
「え?こんなちょっとで危ないのワン?」
ともりゅうが静かに言う。
「ちっぽけに見えるが、油断が事故を呼ぶ。
大人にとっての3センチは、年配の方には“壁”になるのじゃ。」
玄関の扉が開き、お父さんが笑顔で出迎えてくれた。
「母が最近、外に出るのを怖がるようになってね。
転んだら…と思うと、僕らも心配で。」
創龍は優しくうなずいた。
「心配しながら見送る玄関って、家族みんなに重さが出ますよね。」
◆ 小さな段差の裏に隠れた“大きな不安”
お母さんが玄関に椅子を置き、ゆっくり腰掛けた。
「外は好きなのよ。庭の花も見たいし。
でも、転ぶって思ったら……足がすくんじゃってね。」
その言葉に、ともねこがそっと寄り添う。
「“怖い”って気持ち、誰にでもあるニャ。ひとりで抱えなくていいニャ。」
守龍は段差の高さ、地面の傾斜、滑り具合を丁寧に確認した。
「ふむ……これは、段差解消スロープ+手すり、両方だな。」
創龍が図面を開きながら言う。
「手すりを斜めにつければ、外の地面との“つながり”が生まれるはずです。」
カトーは家族に向き直った。
「外へ出たい気持ち――その背中を押せる玄関を作りましょう。」
◆ 工事スタート。“安心への道”が形になる
コンクリートの削り音が響き、
守龍の職人の手が、玄関の段差を少しずつ整えていく。
創龍は測りを持ち、真剣な表情で角度をチェックする。
「もう少し緩やかに……これくらいかな。」
ともいぬが感心したように言う。
「創龍、めちゃくちゃ成長してるワン!」
創龍は照れながら笑う。
「だって、人の“安心”って形に残るんだって……最近よく分かってきたんです。」
ともりゅうは嬉しそうに目を細めた。
「心を込めた仕事は、必ず暮らしに光を灯すものじゃ。」
◆ 完成した玄関。そして──
工事が終わり、新しい玄関が姿を見せた。
明るい色のスロープ。
手に馴染む木の手すり。
段差は、ほとんど気にならない高さになった。
お母さんがゆっくりと足を出す。
一歩。
もう一歩。
外の風が、ふわりと頬を撫でた。
「……あぁ、外の空気って、こんなに気持ちよかったんだねぇ。」
その声に、お父さんも肩の力が抜けていく。
「ありがとう。本当にありがとう。」
カトーは穏やかな声で言った。
「たった数センチでも、人生が変わることがあります。
今日のお母さんの“一歩”は、新しい未来への一歩でもあります。」
ともねこ:「外の風って、心のドアも開けてくれるニャ。」
ともいぬ:「オレも散歩いきたくなったワン!」
創龍:「これからも、“歩きたい気持ち”を守れる仕事がしたいです。」
ともりゅう:「今日もひとつ、家族の安心が生まれたのう。」
春の風が、玄関を越えて家の中へ流れ込む。
それはまるで――未来の光を運ぶ風だった。
──つづく。
【次回予告】
第57話「お風呂の寒さはもう終わり!〜断熱パネルとやさしい湯気〜」
冬のお風呂の“ヒヤッ”は、もういらない。
フジトモ号が挑む、あたたかな浴室づくりの物語。



