フジトモ島の冒険Adventures on Fujitomo Island

第71話【2026.3-3】

【2026年3月テーマ】

気づかない不便に気づく

私たちは、

困っている人を探すのではなく、

まだ言葉になっていない“少しの不便”に

そっと目を向けます。


【今週のお話】

ジャズ喫茶のトイレの前で、

小さな段差につまずきそうになった日の話です。


午後の光が、店の奥まで差し込んでいる。

サックスの音が低く、ゆっくりと揺れている。

奥の廊下は少し細い。

トイレの前に、ほんのわずかな段差がある。

気づく人は少ない。

でも、足の先は正直だ。

常連の男性が席を立つ。

ゆっくり歩く。

段差の手前で、ほんの一瞬、足が止まる。

視線が下に落ちる。

そして、足を少し高く上げる。

何も起きない。

転びもしない。

ただ、わずかな緊張が体を通る。

戻ってくるときも同じ。

段差の前で、少しだけ慎重になる。

数日後。

廊下の床と同じ色の、薄い板が一枚置かれた。

角は丸く削られている。

見た目は、ほとんど変わらない。

翌週。

同じ男性が席を立つ。

いつもの歩幅で、廊下を進む。

段差の場所を、

そのまま通り過ぎる。

足は止まらない。

視線も下に落ちない。

席に戻り、コーヒーを一口。

「ここ、前より歩きやすいな」

それだけだった。

ジャズは流れ続ける。

光も、匂いも、いつも通り。

変わったのは、

足が止まらなくなったこと。

気づかない不便は、

小さな緊張を生む。

その緊張がなくなるだけで、

空間はやさしくなる。

言われる前に、整える。

それが、この島のやり方。

ちょっと整うだけで、毎日は軽くなる。


フジトモ島について

この物語はフィクションです。

けれど私たちは、現実の暮らしの中で

「ちょっと整える」仕事をしています。

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