朝の海は、まだ少し冷たい風を運んでいた。
フジトモ号の白い帆がふわりと膨らみ、波の上に光を落とす。
ともりゅうが、ゆっくりと空を見上げた。
「今日の風は穏やかじゃ。第二創業期にふさわしい朝じゃな。」
ともねこが耳をぴくりと動かした。
「新しい旅のはじまりって、なんだか心がポカポカするニャ。」
ともいぬが勢いよく飛び跳ねる。
「オレ、今日も現場で笑顔ふりまくワン!全力でいくワン!」
カトーは、三匹の声を聞きながら笑った。
その笑顔は、いつもより少し深い。
「今日の現場は、家族の声が届く家づくりだ。フジトモ号、出航!」
🧭出発 ― 八龍たちの集結
デッキには、フジトモの仲間たちが勢ぞろいしていた。
朝日が差し込む中、彼らの目は希望で光っていた。
守龍:「今日も安全第一。古い木造住宅だ。足元に気をつけよう。」
剛龍:「了解!福祉用具も点検済み!心も体も支える現場だ!」
舞龍:「お客様の“こうなったらいいな”を叶えるのが私たちの仕事ね!」
翔華龍:「光と風が通うLDK…想像するだけでワクワクする。」
橋龍:「現場の写真は私が撮ります。伝わる“ありがとう”を残したい。」
安龍:「忘れ物なし、チェック完了。いつものように整ってます。」
澄龍:「データも図面も準備OK。数字も波動も整ってます。」
創龍:「僕、今日は実践初日です!全力で吸収します!」
みんなの声が、波と一緒に心地よく響いた。
カトーは静かに頷いた。
「ありがとう。今日からまた、“ありがとうが集まる会社”として動き出そう。」
🏠現場 ― 一軒の家と、ひとつの願い
その家は、築35年の木造住宅だった。
外壁にはうっすらと年月の跡。
けれど玄関前には、きれいに咲いた小さな花が並んでいた。
出迎えたのは三人家族。
お母さん、お父さん、そして小学5年生の娘さん。
お母さん:「家族と話したくても、台所にこもると声が届かないの。
せめて、みんなの顔が見えるようにしたくて。」
お父さんは頭をかきながら笑った。
「俺もね、居間でテレビ見ながら“ごはんまだー?”って叫ぶしかないんだよな。」
娘さんが小さな声でつぶやいた。
「ママの顔、見えないのイヤ…」
その言葉に、場の空気がそっと止まった。
ともねこが静かに近づき、優しく言った。
「きっとその気持ちが、この家を変えるニャ。」
ともりゅうがゆっくりと頷いた。
「では、“声の届く家”をつくるとしよう。」
🔧 設計会議 ― 光と風の通り道
舞龍:「壁を抜くだけじゃダメね。空気と人の流れをつなぐ設計にしましょう。」
翔華龍:「アイランドキッチンにして、どこからでも顔を合わせられるように。」
安龍:「段差をなくして、床下に新しい断熱材を入れます。」
守龍:「梁(はり)は古いが、まだ生きてる。補強して再利用できるぞ。」
剛龍:「冬でも裸足で歩ける床にしよう。家全体が温かくなる!」
橋龍:「その言葉、すてきですね。現場の空気を撮って伝えたいです。」
澄龍:「見積もりも整いました。数字の面も問題ありません。」
創龍:「僕、この設計…すごく好きです!」
ともいぬ:「オレもなんかワクワクするワン!広くなったら鬼ごっこできそうワン!」
ともねこ:「走る前に床、乾かしてニャ。」
笑いがこぼれ、現場に柔らかな風が流れた。
🛠工事スタート ― 光が差し込む瞬間
古い壁が取り払われるたび、
まるで家が深呼吸をするように、光と風が部屋の中に流れ込んだ。
白いほこりが光を反射して、金色の粒のように舞う。
その光景を見て、お母さんの目が少し潤んだ。
お母さん:「明るい……まるで違う家みたい。」
翔華龍:「光ってね、心の天気を変えるんですよ。」
ともねこ:「人の心も、壁をなくすと明るくなるニャ。」
ともいぬ:「今日の現場、めっちゃ波動あがってるワン!!」
カトーは少し離れた場所で、ゆっくりとつぶやいた。
「間取りを変えることは、暮らしを変えること。
“安心して笑える家”をつくる、それがフジトモの仕事だ。」
ともりゅうが静かに答えた。
「理念の“ありがとうが集まる会社”、まさにこの風の中にあるのう。」
🌇夕暮れ ― 家族の影がひとつになる
夕日が差し込み、
床にのびる光が家族の影をひとつに結んだ。
お父さんが娘を抱き上げる。
「なんか、あったかいな。」
お母さんが笑う。
「うん。風がやさしい。」
橋龍がシャッターを切った。
「この瞬間…きっと、誰かの希望になる。」
カトーはその場を見守りながら、
静かに言葉を残した。
「ありがとうの光を、家ごとに灯していく。
それが、フジトモ第二創業期のはじまりだ。」
ともりゅう:「次はいよいよ仕上げじゃな。」
ともねこ:「お楽しみにニャ。」
ともいぬ:「完成したら、みんなでごはんワン!」
──つづく。
【次回予告】
第53話「家族の声が届くキッチン〜LDK大改造・後編〜」
料理の音が笑顔を呼ぶ。
完成したキッチンで、家族が流した“ありがとう”の涙とは——。



