登場メンバー
- カトー:フジトモ号の船長。みんなを導くリーダー。
- ともりゅう:知恵の龍。静かに真実を語る。
- ともねこ:癒しの猫!人の気持ちに寄り添い、あたたかな言葉を届ける。
- ともいぬ:元気な犬!いつも笑顔でみんなを励ます。
- 舞龍:明るく前向きな営業。人の感情に寄り添う聞き上手。
- 創龍:見習いスタッフ。ケアマネ資格持ち。成長真っただ中。
夜の空気には、昼とは違う静けさがある。
その静けさの中に――「不安」が隠れていることがある。
カトーたちは、月の光に照らされた一軒の家を訪れていた。
玄関を開けた瞬間、優しいお母さんが迎えてくれた。
「最近、夜になるとね……
おばあちゃんがベッドから起き上がろうとして転びそうになるの。」
舞龍が深くうなずく。
「心配になりますよね。毎晩、気を張ってしまいますよね。」
お母さんの目が少し赤くなった。
「そうなの。離れて暮らしている息子にも心配かけたくなくて。」
ともねこがそっと寄り添うように言った。
「大丈夫ニャ。心の重さ、半分こしようニャ。」
ともいぬは胸を張って言う。
「オレたちが来たからには、安心の夜をつくるワン!」
◆ 問題の中心は “夜の立ち上がり”
創龍はおばあちゃんの部屋へ行き、状況を丁寧に確認した。
「床はフローリング……滑りやすいですね。」
「照明は離れた場所にあるから、スイッチを押すまで暗い。」
「ベッドの高さもちょっと高いです。」
おばあちゃんは申し訳なさそうに笑う。
「迷惑かけちゃ悪いと思ってね、つい自分で動こうとしちゃうのよ。」
ともりゅうが静かに語った。
「“迷惑をかけたくない”という想いが、ゆえに危険を招く……
人の心とは、なんと優しく、そして繊細なものかのう。」
◆ 舞龍の提案(やさしさの設計)
舞龍が柔らかい声で言う。
「おばあちゃん、自分で起き上がりたい気持ちはとっても大事です。
だから――“自分で起きても安全な環境”を作りましょう。」
提案内容は、こうだった。
高さ調整ができる介護ベッド ベッド脇の転落防止ガード 足元に明るいセンサーライト 床の滑り止めマット ベッド周りの“つかまり動作”を考えた手すり
創龍が付け加えた。
「これなら、おばあちゃんの“自分でできる”を守れます。」
お母さんの表情が少しゆるむ。
「そんな方法が……もっと早く相談すればよかった。」
ともねこ:「相談するって、勇気がいるニャ。でも大丈夫ニャ。」
ともいぬ:「今から安心の夜つくるワン!」
◆ 設置作業と、やさしい灯り
工事というほど大がかりではない。
だが、**“心の不安を減らす”**という意味では、とても大切な作業だった。
新しいベッドが静かに設置され、
照明がふっと優しく灯る。
おばあちゃんがゆっくりと腰掛ける。
「……あら、座りやすいわね。」
「高さも丁度いいし、明るい。」
「これなら、夜中に起きても安心だわ。」
その言葉に、お母さんの目がまた潤む。
「これで……少し、眠れるかもしれない。」
カトーは優しく言った。
「介護って、“想い”が深いぶん、不安も深い。
でもこうして、一つずつ安心を積み重ねていけばいいんです。」
ともりゅう:「夜は静けさの中に、ほんの小さな光があればよい。」
ともねこ:「今日の灯りは、安心の色だニャ。」
ともいぬ:「オレ、安心したら眠くなってきたワン……」
(※思いきりあくびして、みんなが笑う)
◆ そして夜が優しくなる
家を出ると、空には丸い月。
風は静かに、坂の下へ流れていく。
お母さんが深く頭を下げた。
「ほんとうに、ありがとうございます。
今日からは、夜が怖くなくなります。」
舞龍が手を振り返す。
「不安なときは、いつでも言ってくださいね。」
創龍が胸を張る。
「ぼくも、もっと安心をつくれるように頑張ります!」
ともりゅう:「今日もまた、“ありがとう”が灯ったのう。」
ともねこ:「やさしい夜、始まるニャ。」
ともいぬ:「帰ったらカトーと夜食タイムだワン!」
月の光が、家族の安心をそっと照らしていた。
──つづく。
【次回予告】
第56話「玄関の小さな段差が運命を変える日」
たった3センチの段差が、転倒を生むこともあれば、
“幸せへの一歩”に変わることもある。
フジトモ号が挑む、玄関リフォームの物語。



