- カトー:フジトモ号の船長。暮らし全体を見て判断する導き手。
- ともりゅう:知恵の龍。小さな違和感の正体を言葉にする。
- ともねこ:癒しの猫。弱音を受け止める存在。
- 剛龍:福祉用具・住宅改修担当。現実解を形にする。
- 創龍:見習いスタッフ。現場で学びながら気づきを重ねる。
夜は静かだ。
だからこそ、小さな不安が大きく聞こえる。
「……トイレ、行きたいな。」
布団の中でそう思った瞬間、
胸の奥に、別の気持ちが浮かぶ。
――暗い。
――遠い。
――もし、転んだら。
ともねこが、そっとつぶやいた。
「夜の不安って、声に出しにくいニャ。」
◆ 依頼のきっかけは「我慢」
今回の相談は、70代の男性。
日中は元気で、外出もできる。
でも夜だけは、トイレに行くのを我慢していた。
「若い頃は平気だったんだけどね。
夜中に廊下を歩くのが、ちょっと怖くなってきて。」
剛龍が廊下を見渡す。
「照明はスイッチ式。
トイレまで直線で7メートル。
途中に、段差が一つ。」
創龍が小さく息をのむ。
「夜中に、これは……怖いですね。」
ともりゅうが静かに言う。
「人は“怖さ”を避けるために、身体に無理をさせる。
それが、別の不調を生むのじゃ。」
◆ カトーの視点「家は、夜に本性を出す」
カトーは、電気を消してみようと言った。
「夜の動線は、昼とは別物です。
暗い状態で、もう一度見てみましょう。」
廊下は思った以上に長く、
影が濃く落ちていた。
「……これは、我慢しますね。」
本人がぽつりと言う。
ともねこ:「我慢は、体にも心にもよくないニャ。」
カトーははっきり言った。
「夜に安心できない家は、
本当の意味で“安心な家”じゃない。」
◆ 解決の設計図は「迷わない・止まらない」
剛龍が提案する。
「ポイントは三つです。
“迷わない・止まらない・つまずかない”。」
・足元を照らす人感センサーライト
・トイレまで続く連続手すり
・段差をなくし、床材を統一
・トイレ内の立ち座り補助バー
創龍がメモを取りながら言う。
「動線って、“線”じゃなくて“安心の道”なんですね。」
ともりゅうがうなずく。
「道は、心を運ぶものじゃ。」
◆ 工事後、夜が変わった
数日後。
夜、再び家を訪れる。
電気を消しても、
廊下にやさしい光が順に灯る。
一歩、また一歩。
「……あれ?」
男性が笑った。
「怖くない。」
トイレの前で立ち止まり、
ゆっくり振り返る。
「夜中に、迷わないって……
こんなに楽なんだな。」
創龍が胸を張る。
「安心は、ちゃんと設計できるんですね。」
ともねこ:「夜が、やさしくなったニャ。」
ともりゅう:「これで、“我慢の夜”は終わりじゃ。」
◆ 余韻
帰り際、男性が言った。
「これなら、夜もちゃんと眠れそうだ。
ありがとう。」
カトーは静かに答えた。
「眠れる夜は、明日を生きる力になります。」
廊下の灯りが、ゆっくり消えていく。
そこにはもう、不安は残っていなかった。
──つづく。
【次回予告】
第59話
「洗面所が寒いと、朝がつらい〜一日の始まりを整える場所〜」
朝の第一歩が変わると、
一日の流れが変わる。



