フジトモ島の冒険Adventures on Fujitomo Island

🌟第64話

「“まだ使える”と“今ちょうどいい”の違い〜台所が教えてくれたこと〜」

  • カトー:フジトモ号の船長。暮らしの変化を言葉にする導き手。
  • ともりゅう:知恵の龍。時間と人の関係を静かに語る。
  • ともねこ:癒しの猫。台所の空気にいち早く気づく。
  • 舞龍:プランナー。生活者の目線で違和感を拾う。
  • 剛龍:住宅改修担当。現場で現実解を組み立てる。

朝の台所には、

独特の音がある。

換気扇の低い唸り。

フライパンがコンロに触れる乾いた音。

包丁がまな板を打つ、一定のリズム。

その家の台所も、

毎朝ちゃんと“動いて”いた。

でも――

どこか、ぎこちない。

ともねこが足元を見て、首をかしげた。

「歩くたびに、ちょっと詰まる感じがするニャ。」

◆ 相談は、こんな一言だった

「壊れてはいないんです。」

そう前置きして、

奥さんは少しだけ困ったように笑った。

「ただ……

朝ごはんを作るのに、前より時間がかかるんです。」

舞龍が台所に立ち、

ゆっくり一周する。

シンクから冷蔵庫。

冷蔵庫から作業台。

作業台からコンロ。

「……動線が、半歩ずつ遠いですね。」

剛龍が補足する。

「高さも、少し合ってない。」

ともりゅうが静かに言う。

「“まだ使える”は、

“今に合っている”とは限らぬ。」

◆ 台所は、毎日の“積み重ね”

奥さんは、

コンロの前で少し背中を丸めた。

「昔は、平気だったんです。

でも最近、夕方になると腰が重くて。」

フライパンを持ち上げる手に、

ほんの一瞬の迷いがある。

ともねこがそっと言う。

「その“一瞬”が、積もるニャ。」

カトーは、

朝の光が差し込む窓を見ながら話した。

「台所は、

一日で一番“繰り返す場所”です。」

「だから、

合わなくなると、

毎日が少しずつ削られていく。」

◆ フジトモの提案は、大きく変えない

舞龍が図面を広げる。

・作業台の高さを、数センチ下げる

・よく使う収納を、腰の位置へ

・冷蔵庫の向きを少し変える

・足元に、やわらかい感触の床材

剛龍がうなずく。

「全部そのままでも、

“並び”を変えるだけで楽になります。」

ともねこ:「ちょっとの違いが、毎日を変えるニャ。」

ともりゅう:「暮らしとは、

小さな最適化の積み重ねじゃ。」

◆ 変わった朝

数日後。

同じ時間。

同じ台所。

でも――音が違う。

包丁のリズムが軽い。

足の動きに、迷いがない。

奥さんが、

ふっと息を吐いた。

「……あれ?」

「前より、

自然に動けてる。」

舞龍が微笑む。

「“考えなくていい”って、楽ですよね。」

剛龍が言う。

「体に合ってる証拠です。」

ともねこは、

日だまりで丸くなりながら言った。

「今日は、台所がやさしいニャ。」

◆ “まだ使える”を手放す勇気

奥さんは、

古い収納を撫でながら言った。

「捨てるの、少し迷いました。」

「でも……

今の私には、

今の台所がいいですね。」

ともりゅうが静かに答える。

「選び直すことは、

否定ではない。」

「今を大切にする、

立派な決断じゃ。」

カトーはまとめた。

「2026年は、

“我慢を続ける年”じゃない。」

「今の自分に合う暮らしを、

素直に選び直す年です。」

◆ 余韻

朝の光が、

台所の床に伸びる。

そこに、

無理はない。

ただ、

自然な動きがあるだけ。

ともねこが小さく言った。

「今日も、いい一日が始まるニャ。」

──つづく。

 

🔜 次回予告

第65話

「立ったまま、長くいられなくなったら〜キッチンと体の関係〜」

体が変わると、

家の“正解”も変わる。

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