フジトモ島の冒険Adventures on Fujitomo Island

🌟第65話

「立ったまま、長くいられなくなったら〜キッチンと体の関係〜」

  • カトー:フジトモ号の船長。暮らしと体の変化をつなぐ導き手。
  • ともりゅう:知恵の龍。変化を受け入れる意味を語る。
  • ともねこ:癒しの猫。人の小さな無理に気づく存在。
  • 剛龍:住宅改修担当。体に合う現実的な解を組み立てる。

 

夕方のキッチンは、

朝とは少し空気が違う。

窓の外が暗くなり、

コンロの火だけが明るい。

その家の奥さんは、

フライパンを置いたまま、

一度、深く息を吐いた。

「……ちょっと、休もう。」

ともねこが足元を見上げる。

「さっきから、動きが止まるニャ。」

◆ 相談は「疲れやすくなった」

「前は、

立ちっぱなしでも平気だったんです。」

そう言いながら、

奥さんはイスに腰を下ろした。

「でも最近、

夕方になると、足が重くて。」

剛龍が静かに聞く。

「どこか痛みはありますか?」

「痛いほどじゃないんです。

ただ……長く続かない。」

ともりゅうが言った。

「それは、衰えではない。」

「体が、

“やり方を変えよう”と

知らせておるのじゃ。」

◆ キッチンは、立つ場所だった

カトーは、

キッチン全体をゆっくり見渡した。

作業台。

コンロ。

シンク。

どれも、

「立って使う」前提で作られている。

「キッチンって、

実は一番“体力を使う場所”なんです。」

剛龍が続ける。

「立つ。歩く。持つ。ひねる。」

「これを、

一日何十回も繰り返す。」

ともねこ:「毎日だと、効いてくるニャ。」

◆ フジトモの提案は「休めるキッチン」

大きな工事はしない。

・キッチンに合う高さのイス

・座って使える作業スペース

・よく使う道具を、手前に集約

・床の硬さをやわらかくする

剛龍が説明する。

「“全部立つ”をやめるだけで、

かなり楽になります。」

ともりゅうがうなずく。

「体に合わせて、

場を変える。」

「それは、

とても自然な選択じゃ。」

◆ 変わった夕方

数日後。

同じ時間。

同じ夕方。

でも、

奥さんは途中で座っていた。

イスに腰をかけ、

ゆっくり包丁を動かす。

「……不思議。」

「疲れ切る前に、

夕飯ができる。」

ともねこがそばで丸くなる。

「今日は、顔がやわらかいニャ。」

剛龍が言う。

「体が、ちゃんと保ってますね。」

◆ 無理をしないという選択

奥さんは、

湯気の立つ鍋を見ながら言った。

「昔みたいに動けなくなった、

って思ってたんです。」

「でも……

やり方を変えれば、

まだちゃんとできるんですね。」

ともりゅうが静かに答える。

「変わることは、

終わりではない。」

「続けるための、

知恵じゃ。」

カトーはまとめた。

「暮らしは、

頑張り続けるものじゃない。」

「体に合わせて、

形を変えながら続けるものです。」

◆ 余韻

キッチンの灯りが、

床に落ちる。

そこには、

急ぎも、無理もない。

ただ、

落ち着いた時間がある。

ともねこが小さく言った。

「今日も、ちゃんとできたニャ。」

──つづく。

 

🔜 次回予告

第66話

「座れる場所が増えると、会話が増える〜ダイニングの変化〜」

姿勢が変わると、

家族の距離も変わる。

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