「座れる場所が増えると、会話が増える〜ダイニングの変化〜」
- カトー:フジトモ号の船長。暮らしの“間(ま)”を見つめる導き手。
- ともりゅう:知恵の龍。場が生む関係性を語る。
- ともねこ:癒しの猫。沈黙と声の温度に敏感。
- 舞龍:プランナー。生活の視点から変化を形にする。
夕方のダイニングは、
少しだけ影が長い。
テーブルの上には、
湯のみと新聞。
椅子はあるのに、
誰も座っていない。
「ここ、
あまり使わなくなったんです。」
そう言って、
ご主人は苦笑いした。
ともねこが椅子の下をのぞく。
「座る“理由”がなくなってるニャ。」
◆ 相談は「食事が静かになった」
「前は、
ここでお茶してたんです。」
奥さんが、
テーブルの縁に手を置く。
「でも最近は、
キッチンで済ませちゃって。」
舞龍が部屋を見回す。
テーブルは大きい。
椅子は固い。
距離が、少し遠い。
「“食べる場所”にはなってますが、
“留まる場所”ではないですね。」
ともりゅうが言う。
「人は、
落ち着ける場でこそ、
言葉を置く。」
◆ ダイニングは、通過点になっていた
カトーは、
椅子を引いて座ってみた。
背中が、
少し張る。
「長く座る前提じゃない。」
舞龍がうなずく。
「だから、
食べ終わると立つ。」
「会話が生まれる前に、
時間が終わるんです。」
ともねこ:「静かすぎる食卓、
ちょっとさみしいニャ。」
◆ フジトモの提案は「居てもいい席」
工事は最小限。
・座面のやわらかい椅子へ
・テーブルの位置を窓側へ
・照明を一段、低く
・背もたれの角度を調整
舞龍が言う。
「“座れる”じゃなくて、
“居ていい”に変えましょう。」
ともりゅう:「場が変われば、
心の動きも変わる。」
◆ 変わった夕食後
同じ時間。
同じ料理。
でも――
誰も、すぐに立たなかった。
湯のみを持ち替え、
もう一口。
「そういえばさ。」
ご主人が、
ぽつりと話し始める。
大した話じゃない。
今日あったこと。
昔のこと。
ともねこが、
テーブルの下で丸くなる。
「声が増えてきたニャ。」
◆ 会話は、準備が必要
奥さんが言った。
「話すこと、
なくなったと思ってました。」
「でも……
座る時間がなかっただけですね。」
ともりゅうが静かに答える。
「言葉は、
余白に宿る。」
カトーは、
ダイニングを見渡して言った。
「家族の会話は、
努力じゃ続かない。」
「居られる場所があって、
初めて自然に生まれる。」
◆ 余韻
夜のダイニング。
照明は、やわらかい。
そこにあるのは、
会話の“気配”。
ともねこが小さく言った。
「今日は、
家がよくしゃべるニャ。」
──つづく。
🔜 次回予告
第67話
「壁をなくすと、気配がつながる〜LDKという選択〜」
仕切りを減らすと、
家族の距離も変わる。
