フジトモ島の冒険Adventures on Fujitomo Island

🌟第66話

「座れる場所が増えると、会話が増える〜ダイニングの変化〜」

  • カトー:フジトモ号の船長。暮らしの“間(ま)”を見つめる導き手。
  • ともりゅう:知恵の龍。場が生む関係性を語る。
  • ともねこ:癒しの猫。沈黙と声の温度に敏感。
  • 舞龍:プランナー。生活の視点から変化を形にする。

 

夕方のダイニングは、

少しだけ影が長い。

テーブルの上には、

湯のみと新聞。

椅子はあるのに、

誰も座っていない。

「ここ、

あまり使わなくなったんです。」

そう言って、

ご主人は苦笑いした。

ともねこが椅子の下をのぞく。

「座る“理由”がなくなってるニャ。」

◆ 相談は「食事が静かになった」

「前は、

ここでお茶してたんです。」

奥さんが、

テーブルの縁に手を置く。

「でも最近は、

キッチンで済ませちゃって。」

舞龍が部屋を見回す。

テーブルは大きい。

椅子は固い。

距離が、少し遠い。

「“食べる場所”にはなってますが、

“留まる場所”ではないですね。」

ともりゅうが言う。

「人は、

落ち着ける場でこそ、

言葉を置く。」

◆ ダイニングは、通過点になっていた

カトーは、

椅子を引いて座ってみた。

背中が、

少し張る。

「長く座る前提じゃない。」

舞龍がうなずく。

「だから、

食べ終わると立つ。」

「会話が生まれる前に、

時間が終わるんです。」

ともねこ:「静かすぎる食卓、

ちょっとさみしいニャ。」

◆ フジトモの提案は「居てもいい席」

工事は最小限。

・座面のやわらかい椅子へ

・テーブルの位置を窓側へ

・照明を一段、低く

・背もたれの角度を調整

舞龍が言う。

「“座れる”じゃなくて、

“居ていい”に変えましょう。」

ともりゅう:「場が変われば、

心の動きも変わる。」

◆ 変わった夕食後

同じ時間。

同じ料理。

でも――

誰も、すぐに立たなかった。

湯のみを持ち替え、

もう一口。

「そういえばさ。」

ご主人が、

ぽつりと話し始める。

大した話じゃない。

今日あったこと。

昔のこと。

ともねこが、

テーブルの下で丸くなる。

「声が増えてきたニャ。」

◆ 会話は、準備が必要

奥さんが言った。

「話すこと、

なくなったと思ってました。」

「でも……

座る時間がなかっただけですね。」

ともりゅうが静かに答える。

「言葉は、

余白に宿る。」

カトーは、

ダイニングを見渡して言った。

「家族の会話は、

努力じゃ続かない。」

「居られる場所があって、

初めて自然に生まれる。」

◆ 余韻

夜のダイニング。

照明は、やわらかい。

そこにあるのは、

会話の“気配”。

ともねこが小さく言った。

「今日は、

家がよくしゃべるニャ。」

──つづく。

 

🔜 次回予告

第67話

「壁をなくすと、気配がつながる〜LDKという選択〜」

仕切りを減らすと、

家族の距離も変わる。

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