フジトモ島の冒険Adventures on Fujitomo Island

🌟第67話

「壁をなくすと、気配がつながる〜LDKという選択〜」

  • カトー:フジトモ号の船長。家全体の流れを見る導き手。
  • ともりゅう:知恵の龍。空間と心の関係を語る。
  • ともねこ:癒しの猫。気配の変化に敏感。
  • 剛龍:住宅改修担当。構造と暮らしの現実をつなぐ。

 

その家には、

壁が多かった。

キッチンとダイニング。

ダイニングとリビング。

それぞれが、きちんと区切られている。

音も、

光も、

人の気配も。

「昔は、

これが“ちゃんとした家”だったんです。」

ご主人が、

壁を見ながらそう言った。

ともねこが、

境目で立ち止まる。

「向こうに人がいるのに、

いない感じがするニャ。」

◆ 相談は「声が届かない」

奥さんが言った。

「料理してると、

リビングの様子が分からなくて。」

「テレビの音も、

顔も、

何をしてるかも。」

剛龍が壁を軽く叩く。

「構造的には、問題ありません。」

「でも――

暮らし方は、変わってますね。」

ともりゅうが静かに言う。

「家は、

時代のままではいられぬ。」

「人が変われば、

空間も変わる。」

◆ 壁は、守るものだった

カトーは、

間取り図を広げた。

「この壁、

悪者じゃないんです。」

「音を遮る。

匂いを止める。

集中をつくる。」

「でも今は、

別の役割が求められている。」

ともねこ:「一人が安心な時間と、

つながってたい時間、

両方ほしいニャ。」

◆ フジトモの提案は「全部じゃない」

剛龍が言った。

「全部壊す必要はありません。」

・抜ける壁だけ抜く

・視線が通る位置をつくる

・音が混ざりすぎない配置

・梁を活かして“境界”を残す

「つなぐけど、

溶かしすぎない。」

ともりゅうがうなずく。

「境があるから、

つながりが分かる。」

◆ 壁がなくなった日

工事が終わった日。

朝の光が、

キッチンからリビングまで

まっすぐ伸びていた。

鍋の音。

テレビの音。

足音。

全部が、

同じ空間にある。

奥さんが言った。

「声、

大きく出さなくていいんですね。」

ご主人が笑う。

「今、何してるか分かる。」

ともねこが、

部屋を横切る。

「家が一つになったニャ。」

◆ LDKは、贅沢じゃない

カトーは、

新しい空間を見回して言った。

「LDKは、

広さの話じゃない。」

「気配が届く距離の話です。」

ともりゅう:「共に生きるとは、

同じ場にいることではない。」

「感じ合える距離に、

身を置くことじゃ。」

◆ 余韻

夕方。

同じ部屋で、

それぞれが別のことをしている。

でも――

孤立していない。

ともねこが、

真ん中で丸くなる。

「今日は、

家が一息ついてるニャ。」

──つづく。

 

🔜 次回予告

第68話

「広くなったのに、落ち着く理由〜天井と光の話〜」

空間の“高さ”は、

心にも影響する。

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