「壁をなくすと、気配がつながる〜LDKという選択〜」
- カトー:フジトモ号の船長。家全体の流れを見る導き手。
- ともりゅう:知恵の龍。空間と心の関係を語る。
- ともねこ:癒しの猫。気配の変化に敏感。
- 剛龍:住宅改修担当。構造と暮らしの現実をつなぐ。
その家には、
壁が多かった。
キッチンとダイニング。
ダイニングとリビング。
それぞれが、きちんと区切られている。
音も、
光も、
人の気配も。
「昔は、
これが“ちゃんとした家”だったんです。」
ご主人が、
壁を見ながらそう言った。
ともねこが、
境目で立ち止まる。
「向こうに人がいるのに、
いない感じがするニャ。」
◆ 相談は「声が届かない」
奥さんが言った。
「料理してると、
リビングの様子が分からなくて。」
「テレビの音も、
顔も、
何をしてるかも。」
剛龍が壁を軽く叩く。
「構造的には、問題ありません。」
「でも――
暮らし方は、変わってますね。」
ともりゅうが静かに言う。
「家は、
時代のままではいられぬ。」
「人が変われば、
空間も変わる。」
◆ 壁は、守るものだった
カトーは、
間取り図を広げた。
「この壁、
悪者じゃないんです。」
「音を遮る。
匂いを止める。
集中をつくる。」
「でも今は、
別の役割が求められている。」
ともねこ:「一人が安心な時間と、
つながってたい時間、
両方ほしいニャ。」
◆ フジトモの提案は「全部じゃない」
剛龍が言った。
「全部壊す必要はありません。」
・抜ける壁だけ抜く
・視線が通る位置をつくる
・音が混ざりすぎない配置
・梁を活かして“境界”を残す
「つなぐけど、
溶かしすぎない。」
ともりゅうがうなずく。
「境があるから、
つながりが分かる。」
◆ 壁がなくなった日
工事が終わった日。
朝の光が、
キッチンからリビングまで
まっすぐ伸びていた。
鍋の音。
テレビの音。
足音。
全部が、
同じ空間にある。
奥さんが言った。
「声、
大きく出さなくていいんですね。」
ご主人が笑う。
「今、何してるか分かる。」
ともねこが、
部屋を横切る。
「家が一つになったニャ。」
◆ LDKは、贅沢じゃない
カトーは、
新しい空間を見回して言った。
「LDKは、
広さの話じゃない。」
「気配が届く距離の話です。」
ともりゅう:「共に生きるとは、
同じ場にいることではない。」
「感じ合える距離に、
身を置くことじゃ。」
◆ 余韻
夕方。
同じ部屋で、
それぞれが別のことをしている。
でも――
孤立していない。
ともねこが、
真ん中で丸くなる。
「今日は、
家が一息ついてるニャ。」
──つづく。
🔜 次回予告
第68話
「広くなったのに、落ち着く理由〜天井と光の話〜」
空間の“高さ”は、
心にも影響する。
