フジトモ島の冒険
― 暮らしの中の再出発の物語 ―

フジトモスタッフの一人が、かつて老人ホームで出会った方との実体験をもとにした物語です。
プライバシーに配慮し、お名前は仮名とし、一部内容にフィクションを交えてご紹介しています。
~ポータブルトイレが変えた、シゲ子さんの毎日~
シゲ子さんは、特別養護老人ホームに入所されていた80代の女性です。
重い認知症があり、ほとんど言葉を発することはありませんでした。
寝たきりの状態で、長い間、おむつを使っての排泄が続いていました。
その中で、便がお尻の皮膚にあたってしまうことで、ただれや赤みを繰り返していました。
言葉で「痛い」「つらい」と伝えることはできませんでしたが、皮膚の状態や表情から、シゲ子さんにとって大きな負担になっていることが分かりました。
「少しでもラクに過ごしてほしい」

「どうしたら、少しでもラクに、快適に過ごしてもらえるだろう?」
まず取り組んだのは、シゲ子さんの排便のリズムを知ることでした。
排便の記録を細かく確認しながら、便秘の解消にも取り組みました。
水分量を少しずつ増やし、お腹をやさしく「の」の字にマッサージ。
おへそを中心に、時計回りにやさしくさすることで、腸の動きを促すようにしました。
見えてきた、シゲ子さんの排便リズム
そうして様子を見ていくうちに、
2~3日に1度、朝食後に排便が出やすい
というシゲ子さんのリズムが見えてきました。
そこで、そのタイミングに合わせて、ポータブルトイレに座ってもらうことにしました。
座って排便できる環境を整える

シゲ子さんは、自分で立ち上がることができませんでした。
ポータブルトイレに座る時も、介護士が身体を支えながら、抱きかかえるように移っていただく必要がありました。
その時に、横の肘置きが固定されたままだと、身体を移す時の妨げになってしまいます。
そこで、肘置き(アームレスト)を跳ね上げられるタイプのポータブルトイレを選びました。
横から移りやすくすることで、シゲ子さんの身体への負担も、介護士の介助の負担も、少しでも減らせるようにしました。
寝たままではなく、座って排便できるように。
足がしっかり床につくよう足台を用意し、お腹に力を入れやすい姿勢を整えました。
布パンツで、さらに快適に過ごせるように

排便がポータブルトイレでできるようになり、便失禁が少なくなったことから、おむつも見直すことにしました。
紙おむつから、尿取りパッドを組み合わせて使える布パンツへ変更。
パンツは、尿取りパッドをしっかり固定できるボクサータイプを選びました。
さらに、尿取りパッドも一般的な長方形タイプではなく、足の付け根(鼠径部)に沿ってフィットしやすい「ひょうたん型」のものを使用。身体にしっかり沿わせることで、尿が横へ漏れにくいよう工夫しました。
布パンツに替えたことで、お尻まわりの蒸れが軽減され、ご本人もより快適に過ごせる環境へと近づいていきました。
おむつ内の皮膚トラブルが落ち着いていった
排泄の方法が変わったことで、おむつの中で便が皮膚に触れる時間は大きく減りました。
お尻まわりの蒸れが軽減された結果、シゲ子さんのお尻のただれや赤みは、少しずつ落ち着いていきました。
言葉で気持ちを伝えることはできなくても、
表情がやわらぎ、身体の緊張が少し抜けたように見えた時、
「楽になったんだな」と感じました。
言葉がなくても、ケアは伝わる
介護は、言葉だけで成り立つものではありません。
記録を見ること。
身体のサインに気づくこと。
その人のリズムに合わせること。
そして、道具や環境を整えること。
その一つひとつが、その人の安心につながります。
シゲ子さんの出来事は、
小さな工夫が、その人の毎日を大きく変える
と教えてくれた、大切な介護エピソードです。


